外装置の振動制御


近年,情報化社会において衛星通信の需要が増大してきています.特に,移動体通信には大きな期待が寄せられており,今後需要を大きく伸ばす可能性があります.しかし,既存のアンテナ装置では多様化してきた衛星通信サービスや通信量の増加に伴う通信周波数の向上に対応することが難しくなってきています.移動体通信では振動環境下で衛星通信を行うことがほとんどです.このような場合スタビライザと呼ばれる装置を用いて振動環境下でもアンテナを正確に衛星の向きに向かせる必要があります.より高い通信周波数に対応するためにはスタビライザの精度を向上させる必要があります.一方,衛星通信の普及に伴い,各種の船舶に搭載が可能な小型で低価格のアンテナ装置も求められています.

本研究では小型・低価格で高精度に衛星追尾が可能なアンテナ装置の研究開発を目的としています.

船外装置の振動制御

H∞制御による高精度化

本研究ではまず,制御系の設計に必要なシステムの基本特性実験を行い,アンテナシステムの伝達関数の同定を行いました.これを基にH∞制御器の設計を行いました.設計した制御器を実機に実装し,現在の制御器に比べ高い制御性能を示すことを確認しました.また,既存の動揺検出システムよりもさらに精度の高いセンサシステムを新たに考案し,シミュレーションにより動揺検出精度向上の可能性を確認しました.

H∞制御による高精度化

免振装置の改良設計

本研究では制御系の設計とあわせて,免振装置の構造を解析し,それに基づき改良設計を行うことで耐振性を向上させることを目指しています.

船上に設置されたアンテナ装置は船体の振動や航行中の加速変動などにより幅広い周波数を持つ振動を受けます.これに対しアンテナ装置は基礎部分に免振装置と呼ばれる支持機構を持っており,これにより振動絶縁効果を得ています.この免振装置をモデル化し,MATLABなどのソフトウェアを用いて装置を最適化する設計パラメータを定めていきます.このようにして定めたパラメータを組み込んだ免振装置について振動シミュレーションを行いその効果を確認します.