覚センシング


本研究室では外界からの刺激として触覚に注目し,柔軟で薄型の触覚センサの実現とそれを応用したアプリケーションの開発に向けて研究に取り組んできました.その成果として,2次元荷重分布の中心位置を検出可能な触覚センサと,荷重分布の計測が可能な高密度型触覚センサの2種類の触覚センサの開発に成功しました.また,触覚センサにより得られた触覚情報をネットワークで伝送し,人間の神経に直接伝える実験に成功しました.

触覚神経インターフェース

触覚神経インターフェース

医用工学の分野では生体の神経系と外部機器を直接接続する技術が 注目されています。本研究では遠隔操作されたロボットハンド指先部触覚センサから 出力を操作者の触覚神経系に入力することで触感覚を制裁するシステムを 世界ではじめて成功しました.

触覚神経インターフェース

分布型触覚センサ

分布型触覚センサ

本センサは卍型パターンがマトリクス状に配置されたセンサ電極と感圧導電性ゴムから構成されています.センサの出力は回り込み電流を遮断するアナログ回路により処理され,AD変換された後PCに取り込まれます.

本センサを用いて4本指ロボットハンドの指部を製作し,把持実験を行いました.触覚神経インターフェースの実験に用いられているのが本センサを用いて作られた触覚センサ付きロボットハンドです.

ハンド実験

圧力分布計測実験

触覚情報処理用LSI

触覚情報処理用LSI

分布型触覚センサでは配線数が多くなるという問題点があります.これはロボットへの実装において大きな障害となります.そこで,本研究室では,センサの近くに処理回路を配置し,省配線化を実現するための触覚情報処理用LSIの開発を行っています.このようなLSIは内部にアナログ回路とディジタル回路を持つためミックスドシグナルLSIと呼ばれています.これまで,センサ処理回路を構成する回路要素のLSI化を行い,その動作を確認しています.また,昨年度にはセンサ処理回路をLSI化し,PC経由で8×8マトリクス分布型触覚センサからの触覚情報取得に成功しています.

自由曲面触覚センサ

自由曲面触覚センサ

私達の研究の最大の目的は,人間の皮膚のようにロボットの全身に皮膚感覚を与えることができる触覚センサを開発することです.しかし,ロボットの表面は複雑な曲面の組合せでできているので,そのような触覚センサはあらゆる曲面に形成できなければなりません.

そこで有力な候補となるのがディッピングによる感圧膜形成という方法です.上のイメージ図のように,電極を分布させたロボットハンドを液状の感圧導電性ゴムに浸して,取り出した後ゴムを硬化させて感圧膜を形成します.この方法ならばどんな複雑な形状にも対応することができます.本研究室では上の写真のように球面に実際に触覚センサを形成し,センサが機能することを確認しました.

ディッピングによる感覚皮膜

荷重分布中心位置検出触覚センサ

荷重分布中心位置検出触覚センサ

本研究室では,薄型・柔軟・軽量・省配線・大面積化可能・安価を実現した2次元荷重分布中心位置検出触覚センサを開発しました.本センサは1ms以内という高速な応答速度でセンサに加えられる荷重分布の中心位置とその総荷重を計測することが可能です.センサの計測原理を生かして,センサ処理回路は単純で小規模な回路で実現しています.

現在,本センサの特性改善とともに,センサを応用した様々なアプリケーションの開発を行っています.

荷重分布中心位置検出触覚センサ

2足ロボットのZMP検出

2足ロボットのZMP検出

ZMP(Zero Moment Point)とはロボットに作用する重力・慣性力・床反力によるモーメントの総和が0となる点のことをいいます.ZMPが足裏の接地支持多角形内にあれば,ロボットは安定した歩行を行うことができます.

本研究では,2足歩行ロボットに足裏に荷重分布中心位置検出触覚センサを装着し,新たなZMP検出方法としての有効性を確認しました.