電気通信大学 明・佐藤研究室

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生物模倣型ソフト羽ばたきロボットの研究開発

 本研究室では、高い柔軟性をもつ生物模倣型ロボットの研究開発に取り組んでいます。

 ロボットは柔軟性に富む圧電アクチュエータと可撓性材料(CFRPやPETなど)から構成されており、滑らかで柔らかな振る舞いをします。この柔軟な構造および動作を活かし、様々な特長を有する生物たちを模倣することで、高い運動性や順応性をもつロボットの実現を目指しています。現在は主に水中生物と羽ばたき飛行を行う生物を対象に研究を行なっています。

羽ばたきロボット

 圧電アクチュエータを用いた駆動機構の小型・軽量という特徴に着目し、羽ばたき飛行を行う生物を規範としたロボットの研究開発を行なっています。これまで、生物の羽ばたき動作を参考にフェザリング動作の導入や、高周波数の羽ばたき動作が可能な駆動モジュールの開発などを通し、飛行性能に直結する推力・揚力の向上を実現してきました。

 現在は、羽ばたき時の8の字運動や、昆虫の羽の3次元形状、昆虫の羽ばたきメカニズムを取り入れることで、推力・揚力のさらなる向上を目指しています。

フラッピング、フェザリング、リードラグとは

 羽ばたき飛翔は下図に示す3つの動作の組み合わせにより成り立っています。 フラッピング運動は羽を体軸に対して上下に動く動作です. フェザリング運動は羽前縁部に対してねじる動作です. リードラグ運動は羽を体軸に対して前後に動く動作です.

Flapping_Feathering_Lead-lag.png

能動フラッピングと受動フェザリングを持つ羽ばたき機構

H-Flapping_model.png

 フラッピング動作を行うアクチュエータとして圧電繊維複合材料を使用し、羽を柔軟にすることにより受動的なフェザリング運動を行い、また羽の付け根部分にヒンジ構造を採用することで飛行性能の向上を目指した機構の開発を行いました。

 これにより最大揚力は自重の16倍を超え、圧電繊維複合材料が羽ばたきロボットに応用する可能性があることを確認しました。

駆動方法の改善による飛行性能向上

M-wave.jpg

 揚力推力向上のためにMFCに流す様々な波形を流して性能向上を図りました。sin波と矩形波単独では芳しい結果を得られませんでしたが、sin波と矩形波を組み合わせた波形(飽和sin波形)を用いることで揚力と推力の性能向上をすることができました。

間接駆動羽ばたき駆動モジュールの開発

リングモジュール

Ring module.jpg

 昆虫の羽ばたき飛行は、翅が付け根部で直接筋肉に接続し、筋肉を動かすことで羽ばたきを行う「直接飛翔筋型」と、筋肉が外骨格に接続し、筋肉の駆動による外骨格の変形によって羽ばたきを行う「間接飛翔筋型」の2種類に分類されます。

 このリング型モジュールは後者の「間接飛翔筋型」の羽ばたきメカニズムを模倣しています。リング形状にしたカーボンプレートに圧電繊維複合材料を貼り付け駆動させることで、昆虫の外骨格の変形を再現しました。ロボットは、リング型駆動モジュール、リングの振動運動を羽ばたき運動に変換するヒンジ型の変換機構、実際の翅の画像データを元に加工して作られた翅の3点で構成されています。

柔軟結合された両梁モジュール

double_beam_module.jpg

 上記のリング型モジュールは、(1)MFCを貼る枚数(面積)が少ない、(2)モジュール全体が変形しづらいといった問題がありました。そこでカーボンプレートを曲げ、両端が回転できるようテープで固定した新しい駆動モジュールを考案しました。これにより、従来機と比較して約3.3倍の発生力が得られました。

 また従来のヒンジ機構はヒンジ部分に応力集中が生じ、損傷しやすいという問題がありました。そこで、てこのような回転ヒンジのある機構を開発しました。さらに実際の昆虫の羽ばたき角度は35~60°であるため、今回は平均して45度の羽ばたき角度が実現できるように変換機構を設計しました。

 結果は残念ながら飛行に至らなかったものの、ロボットの自重39.2[mN]に対し36.67[mN]の平均揚力を得ることができ、揚力と自重の比率を大幅に向上できました。

羽の3次元形状による揚力への影響

S-wing_model.jpg

 推力揚力の向上を図るために、従来の羽を基にして、羽内部の支脈を3パターンに分けて推力・揚力の計測を行いました。その結果、内部支脈を少なくした構造が軽量かつ適切な剛性を維持し、高い性能を発揮することができました。

トンボの羽ばたき運動を模倣した羽ばたき機構の開発

羽の偏重心を活用したフラッピングとフェザリング運動の実現

 トンボの羽ばたき飛行を観察すると、その翅はただ上下に羽ばたいているのではなく、翅が周期的に捻じれながら羽ばたいているのが観察できます。この動作をフェザリングと言い、これによりトンボは揚力・推力を向上させていると考えられています。そこでトンボの羽が流体に対して効果のある特殊な形状を持っていることを参考に、凹凸をもった羽形状を生成し、揚力の向上を図りました。結果、平坦な羽と比較して前進飛行時における揚力・推力の向上を行うことができました。

 上記の理由から、フェザリング動作を行える機構を研究しています。トンボの翅について調査した所、トンボの翅には縁紋と呼ばれる色の濃い点があり、この点の密度が他の部分より大きいためトンボの翅の重心が翅の前縁部にずれていることが判明しました。つまり、この重心の偏りによって翅の捩じりを実現している可能性があります。また翅の端点に質量を集中することで、羽ばたき(フラッピング)角度の向上も期待できます。

 現在は縁紋を付与した翅を作成した所で、これから実機へ組み込む予定です。

wing.jpg

8の字運動を実現する羽ばたき機構の開発

 昆虫の飛行メカニズムを解析すると、その飛行はフラッピング運動とフェザリング運動を組み合わせることにより、羽が8の字に近い軌道をとることがわかっています。現在、MFCを用いて8の字運動を実現できる機構を開発中です。


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Last-modified: 2019-10-22 (火) 18:56:44