電気通信大学 明・佐藤研究室

[ Home ] [ What's new ] [ Research | Member | Access | Paper | Link | Sitemap ]

Top/高運動性能ヒューマノイドの研究開発

高運動性能ヒューマノイドの研究開発

概要

高運動性能ヒューマノイドの研究開発

 明研究室では,高運動性能ヒューマノイドロボットの研究開発を行っており,そのアプローチ方法もさまざまです. ゴルフスイングロボットのシステムをヒューマノイドロボットに応用するために,ロボットの下半身に用いられるアクチュエータの減速比を下げるために用いる変減速機構の開発,変減速機構にストッパを追加した機構や,変減速機構を応用した負荷感応無段変速機構を有する研究,などがその一例です. 変減速機構関連の研究だけではなく,関節間のトルク相互利用可能な脚機構の開発,複数アーチを有する足機構の開発や,シミュレーションソフトを用いた跳躍動作の運動計画の研究も行っています. 最近では,新たな研究として人間の腓腹筋のシステムをもとに,非線形特性を有する2関節機構の開発という新たな研究テーマも扱っています. このように,明研究室では,さまざまな観点からヒューマノイドロボットの運動性能の向上を目的に,実機製作,シミュレーションの研究を行っています.      

関節間のトルク相互利用可能な脚機構の開発

  • 概要

 本研究ではスマートでダイナミックな運動を実現するために慣性力やストッパの反力を有効に利用可能な低減速ロボットの開発を目指し,一般的な電磁アクチュ エータを持つロボットの重力によって生じる静的なトルクを保障し,関節間の駆動トルクの相互利用が可能なバネ機構を提案します.これにより関節の減速比をあげずに出力能力の向上を行うことができると考えられます.

  • 機構詳細
    関節間のトルク相互利用可能な脚機構の開発1.jpg
     図のように上肢と下肢に二つのバネを搭載し,遊脚では脚の持ち上げ方向に,接地脚では状態の持ち上げ方向に3関節間でトルクを相互に利用可能になっています.      

非円形歯車減速機を用いた膝機構の開発

  • 概要

 本研究では二足歩行ロボットが屈脚動作を行う際に膝関節に必要となる駆動トルクにあわせて,膝関節の減速比を変化させる非円形歯車変減速機構を提案します.これにより,膝関節のアクチュエータに必要となるトルクの低減,また,膝関節の減速比を下げることで慣性力といった外力の利用がしやすくできると考えられます.

非円形歯車減速機を用いた膝機構の開発1.jpg
  • 機構詳細

 膝関節の駆動に図のような非円形歯車を用いています.この歯車は非円形でかつ回転中心が歯車の中心にないため,関節角度によって減速比を変化させることができます.      

負荷感応変速リンク機構を用いた膝関節を有する脚機構の開発

  • 概要

 ヒューマノイドロボットの関節のうち,アクチュエータに必要なトルクの変動が特に大きいとされるのが膝関節です.2足歩行ロボットの歩行動作には遊脚相と立脚相が存在します.これら2相間では,膝関節アクチュエータに必要な静トルクが大きく変化します(図1参照).そこで,歩行動作において膝関節駆動部分に加わる自重を支える負荷トルクに対し,アクチュエータの減速比が変化する負荷感応変速機構を膝関節に導入することで,効率的な歩行の実現を図ります.

関節間のトルク相互利用可能な脚機構の開発2.jpg
  • 機構詳細

 以下の図に機構部を示します.この研究の元となるのは変減速リンク機構です.そのうちの1つのリンクを図のオレンジと黄色のリンクパーツの2本のリンクで疑似リンクとして再現します.その間にねじりバネが入っており,遊脚相と立脚相で機構に加わる負荷に対してねじりバネがたわみ,図のピンクで示した疑似リンク長が2種類に変化します.そして,リンク機構の減速比が2種類に変化し,歩行動作に要求される膝関節静トルクの変化に対応します.

関節間のトルク相互利用可能な脚機構の開発3.jpg

     

ストッパーを有する膝関節機構の開発

  • 概要

 人間の関節には関節角度によって非線形な反力が生じる特性があります.その特性を模倣した機構(ストッパー)を二足歩行ロボットの関節に取り入れることでロボットの運動性能向上を図ります.

  • 機構詳細

 ストッパーはバネによって構成されており,複数のバネによって非線形な反力を得られるようにしています.本研究で開発されたストッパーには,板バネを用いたものとねじりバネを用いたものがあります. 板バネとねじりバネどちら場合でも,関節角度によって反力が生じるバネの枚数が変化するようになっているため,疑似的に非線形な力が関節に作用するようになっています.

ストッパーを有する膝関節機構の開発1.jpgストッパーを有する膝関節機構の開発2.jpg
     

複数アーチを有する足機構に関する研究

 ヒューマノイドロボットを安定して歩行させるためには, 坂・階段・砂地・砂利道等の様々な地面の起伏に対応できる脚機構, 制御法が搭載されていなければなりません. そこで近年, ヒューマノイドロボットによる歩行の安定化の研究が行われており, その一つとして人間の足裏構造を参考にした脚が開発されています. 本研究では, 更なる歩行安定化のために, 土踏まずのアーチ構造に着目し, 今まで単一のアーチでしか検証されていなかった歩行安定効果に対して,実際の足裏のように複数のアーチを持つ場合の効果を検証します.

複数アーチを有する足機構に関する研究1.jpg

 ヒトの足裏アーチ構造は, 下図のように複数のアーチがあります. アーチ構造は鉛直方向の荷重をスラスト方向に伝達する働きがあり, このアーチの変形により各関節を支える筋や腱などが引き延ばされ粘弾性の働きをすることによって, 地面からの衝撃を減衰させ,上体を安定させます.これらの構造を取り入れたモデルを作成し歩行シミュレーションを行い,歩行安定化に最適なアーチ構造や粘弾性係数を決定します.

複数アーチを有する足機構に関する研究2.jpg

       

変減速交差リンクとストッパー機構を用いた膝構造の開発

 これまで,非線形歯車や四節リンクを用いてアクチュエータの減速比を変化させることで,膝関節のアクチュエータに必要なトルクの低減が可能であることを確認しました.そこで,人体構造をヒントに交差形状の四節リンクを膝関節に導入し,アクチュエータの減速比変化と膝関節可動域の広範囲化を実現しました.さらに,膝関節部にストッパー機構を導入することで,トルクの補助を可能として,片足での伸展歩行を行なうことが可能となりました.

交差リンクとストッパ機構ロボット.png

 


Last-modified: 2019-08-07 (水) 22:34:00