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すべり覚センサ

Last-modified: 2011-12-08 (木) 15:00:00

すべり覚センシング

SlipPrevention

多自由度なロボットハンドで,多種多様な物体の把持・操り動作を行うためには,接触位置や接触力,滑りなどの情報を取得するための触覚センサが必要となります.
特に,物体を破壊しない最小把持力で把持する場合や,物体の操りを行うためにはすべり覚が重要となります.
本研究室では,ロボットハンドへの実装を考慮した,厚さ0.5mm の薄型かつ柔軟な感圧導電性ゴムを用いた滑り覚センサを提案しています.

すべり覚センサ

構成

すべり覚センサの構成

本研究室で開発したすべり覚センサを左図に示します.
本センサはすべり検出エレメントと,PC などの演算処理部によって構成されています.

すべり検出エレメントはガラスエポキシ基板上に図のような渦を巻いた電極パターンを形成し,この上に感圧導電性ゴム (イナバゴム社製) を貼り付けた構成となっています.
電極をフレキシブル基板等で作成すれば,柔軟なセンサを構成でき,円筒面への配置も可能です.
この電極に電圧を印加し,渦巻き電極の電位差を,ADボードを用いてPCに取り込み処理を行います.

すべり検出原理

物体がすべり出す前の出力電圧変化

左図に示すように,すべり検出エレメント上で物体を滑らせると,滑り変位発生直前(3s付近)において,出力電圧に,複雑な電圧変化が発生します(図の拡大部分).

この複雑な電圧変化に含まれる高周波数成分を,離散ウェーブレット変換のハイパスフィルタとしての機能を利用して抽出し, すべり判定を行います.

以下に,初期法線方向力2Nとして,アクリルプレートをセンサ表面で滑らせたときの,すべり検出エレメントからの出力電圧に対し離散ウェーブレット変換を行った結果を示します.

法線力2Nにおける,出力電圧の離散ウェーブレット変換

すべり発生直前に,離散ウェーブレット変換結果が閾値を越え,物体の初期滑りを検出できていることが分かります.

すべり覚情報処理システム

すべり覚情報処理システム

システムの小型化の為,PSoCマイコンによりA/D及びDWTを行います.左図に示すように,80[mm]×75[mm]と大変小型なシステムとなっています. 本システムは9Vの乾電池でも駆動可能であり,配線の取り回しやバッテリースペースの確保といった事が必要ありません. また,A/D分解能は16bitでサンプリングレートは35kHzでの計測が可能となっています. 本システムによりすべり検出がなされると,指定したポートからデジタル出力がされます.

すべり覚センサ動作ビデオ

試作したすべり覚センサ(6mm角)の動作デモビデオです。 センサは,手で持ったアクリル板の中央にある黒い部分です。 センサからは2本の配線が出ています。 ビデオ画面右にあるオシロスコープは,センサからの荷重出力を示しています。 荷重出力は,感圧導電性ゴムの抵抗値を電圧変化で出力したものです。 このため荷重が加わると出力が下がります。 画面左モニター上の深緑色の丸は,信号処理結果を示します。 即ち,すべりが発生した時に緑色に点灯します。

指先でセンサを押した場合,押し圧力に応じて出力が変化するのが観察できます。 また滑りが発生すると緑色のランプが点灯します。 このように本センサは,このような簡単な構造ですが, センサに加わる荷重のみならず滑りを検出することができます。

すべり覚センサを実装した平行グリッパによる把持力調整

すべり検出を利用した平行グリッパの把持力制御のデモ動画です. 平行グリッパの各グリッパ部分にすべり覚センサが取り付けられており, センサからの電圧出力をPSoCマイコンに取り込み,すべり検出を行っています. すべり検出による把持力制御を行わない場合,把持対象物体の重量が時間変動すると,物体をすべり落してしまいます. これに対し,すべり検出に応じて把持力を増加させる把持力制御を行うと,物体を滑らせずに把持することが可能となります。

ビデオ画面のオシロスコープ出力では,把持力を示しています。また深緑色の丸はすべりを検知した時に緑色に点灯します。 すべり制御把持では,すべりが発生すると把持力が増加します。 またビデオの最後の部分で,一度把持した状態から把持力を減少させると, ある把持力で緑のランプが点灯し,再度すべりが発生したことを示します。すると把持力が増加することになり, これを繰り返すことで,結果として物体を滑らさない最小の把持力で物体を把持することになります。