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触覚GUI

Last-modified: 2013-07-31 (水) 15:00:00

触覚GUI(視覚障害者用コンピュータインターフェースの開発)

近年パソコンを利用するときに,画面上のアイコンをマウス,指などでクリック,ドラッグして操作を行う GUI(Graphical User Interface)が多く利用されています。 しかし,このようなGUI環境は,通常のユーザーにとって使い良い反面, 視覚障害者にとって便利な環境とはいえません.

情報化時代といわれる現代においては,情報機器を介して情報にアクセスすることが,色々 な生活場面で必要になっています。このことは,視覚情報を利用できない視覚障害者にとって, 大きな障壁となっています。

そこで, これまでに画面情報を,視覚情報に変わり,凹凸パターンの触覚情報として提示する,触覚ディスプレイが開発されてきました。 しかし,従来の触覚ディスプレイは主に情報表示機能に限られており,入力装置としての機能は十分ではありません。 そこで本研究では クリック,スクロール,描画などの入力機能を付加することにより,触覚を用いたGUIを実現する装置の開発を行いました。

触覚GUIシステムについて(入出力可能な触覚ディスプレイ)

本触覚GUIシステムはモニター画面を触覚パターンとして提示する部分(触覚提示部)と, 人間が指先でクリックドラックした情報を検出する部分(触覚入力部)から構成されています。 触覚提示部は,パソコン画面の表示情報をマトリクス状に配置したピンの凹凸パターンにより提示します. 提示は,マトリクス配置(32×48)された1536本の小さなピンにより構成されており, このピンの上下により凹凸を作り出し,画面情報を表示させます。

触覚入力部は,アイコン操作などを触入力で行えるようなマウスに相当する機能を実現するものです。 触覚入力部は,提示部に加えられた力を6軸力センサにより計測することで実現しています。 このため,接触の位置の計測はもちろん,接触力の大きさとその方向を検出することができます。 なお,触覚提示部のピンのピッチ2.4mmに対して,十分な入力精度を有しています。

触覚GUIシステム

その動作の様子を次の動画に示します。 動画では,パソコン画面の一部が,触覚ディスプレイに凹凸パターンとして提示されていいます。 操作者はその凹凸をなぞることで表示パターンを確認します。 また,操作者は,表示パターンを指先で押すことにより位置情報を入力できます。 ちょうどマウスの場合だと,マウスを動かして表示パターンをなぞり,クリックするようなものです。 (なおこの画像では,操作は健常者が行っています)

触地図アプリケーション

視覚障害者用に開発された地図のことを触地図といいます.触地図は地図の点や線の部分が点字のように隆起しており,触ることで地図を認識できるようになっています.触地図には音声情報が付加されたものも開発されており,視覚障害者にとって使いやすいよう改良が施されています.しかし,従来の触地図には地図が大きく携帯に不便であり汎用性が無いという問題点があります.

そこで本研究では触覚GUIシステムを用いて触地図を提供するアプリケーションの開発を目的とします。 現在,触覚GUIシステムに適した地図情報提示方法の検討や入力インターフェースの検討などを行っています.

触地図アプリケーション

次の動画では,ヨーロッパの地図を提示して,指で示した国名を音声で答える様子を示しています。 もちろん,触覚入力によるスクロール,キー入力による触覚提示画面の拡大・縮小も可能です。

高解像度・スクロールバー付き触覚GUIシステム

触覚スクロールバー開発

操作性の向上を目的に,触覚情報提示面積を,両手操作に合せて横方向に2倍(3072pin)とし, 表示画面をスクロール可能なスライドバーを導入しました。

これまでに本研究室では,高解像ピンディスプレイを用いたグラフィクス提示機能のみでなく,触覚ディスプ レイ画面に対してダイレクトに入力操作ができるインタラクティブな触覚ディスプレイを開発してきました。

しかしながら, 触覚ディスプレイを使用する際にはパソコン画面と触覚ディスプレイ画面の解像度には大きな差があります。 このため, ユーザーは必ず触覚の表示領域を移動させながら全体の内容を把握していました。 このときに問題になるのが, パソコン画面が表示する全体領域と,触覚ディスプレイが表示する部分領域の位置関係が認識できないというこ とでした。 このため,ユーザーはしばしば表示領域位置を見失い,一度初期位置に戻ってから作業をやり直さ なければならず,また表示領域の移動操作も時間がかかる等インタフェースとしては重大な欠陥となっていました。

そこで本研究では, これらの問題を解決するために,触覚ディスプレイのサイドとトップに触覚スクロールバーを取り付けました。 これにより,ユーザは,モニター上のどの部分が,触覚ディスプレイに表示されているかを 触覚スクロールバーの位置から推定でき,かつ,触覚スクロールバーを動かすことで モニター上の表示位置を移動させる機能を開発しました。

表示範囲のマッピング

動画で,触覚スクロールバーの動作の様子を示します。

左側:触覚スクロールバーで表示範囲を入力。右側:触覚スクロールバーで表示範囲を出力。